
専門力はある。
技術も磨いてきた。
サービスについて聞かれれば、何をするのかも、どう進めるのかも説明できる。
相手も「よく分かりました」と言ってくれる。
それなのに、なぜか申し込みにはつながらない。
もしそんなことが続いているなら、足りないのは説明の量ではないかもしれません。
説明しているものと、お客様が知りたいものが違うからです。
専門家は、「何を提供するか」を説明します。
でも、お客様が知りたいのは、
「それを受けたら、自分の仕事や生活はどう変わるのか」
です。
私は、商品を考えるときも、事業者の相談を受けるときも、サービス内容からは考えません。
まず、
そのサービスによって、どのお客様にどんな「新たな日常」を届けたいのか。
そこを一緒に整理します。
そして、それが具体化されたら、その変化を起こすために必要なサービスを逆算してつくります。
お客様が買っているのは、サービスそのものではない
60分のコンサルティング。
月1回の面談。
全6回の講座。
90分の施術。
AIの使い方研修。
これらはすべて、専門家が「何を提供するか」を表したものです。
実際に専門家の方の商品設計や事業計画を見ていると、こうした「何を、何回、何分提供するか」は丁寧に書かれていることが多いです。
もちろん、サービスを説明するうえでは必要です。
でも、お客様が本当に欲しいのは、60分という時間でも、全6回という回数でもありません。
たとえば経営相談なら、
問題が起きるたびに一人で考え込み、やることだけが増えていく状態から、何を優先すればいいのかを整理し、迷わず次の一手を選べるようになること。
AI活用支援なら、
AIの機能を覚えることではなく、毎日の資料づくりや情報整理に使っていた時間が減り、本来考えるべき仕事に時間を使えるようになること。
施術なら、
痛みが軽くなることだけではなく、身体のことを気にせず仕事をしたり、休日に旅行を楽しんだりできるようになること。
お客様が買っているのは、サービスを受ける時間ではないのです。
サービスの先にある、これまでとは違う日常です。
「結果」の、もう一歩先まで考える
商品を考えるとき、
「売上が上がる」
「肩こりが改善する」
「キャリアが整理できる」
「AIが使えるようになる」
という結果を考えることはできます。
でも、ここだとまだ浅い。
売上が安定したら、その人の日常はどう変わるのか。
身体の不安が減ったら、何ができるようになるのか。
働き方を決められたら、月曜日の朝をどんな気持ちで迎えられるのか。
AIで作業時間が減ったら、その時間を何に使えるようになるのか。
ここまで考えます。
私がいう「新たな日常」とは、
サービスを受けた結果として、これまで難しかったことが、自然にできるようになった日常のことです。
たとえば、
「AIが使えるようになる」は結果です。
「毎週3時間かかっていた資料づくりが1時間で終わり、その2時間を企画や顧客対応に使えるようになる」
ここまでいくと、日常になります。
お客様にとって価値があるのは、技術を身につけることそのものではありません。
その技術によって、自分の仕事や生活がどう変わるかです。
専門家は「手段のプロ」だからこそ、手段を売ってしまう
専門家は、長い時間をかけて知識や技術を磨いてきました。
だからこそ、
どんな方法を使うのか。
どんな理論に基づいているのか。
どんな資格を持っているのか。
何回、何分提供するのか。
を丁寧に説明したくなります。
それ自体が悪いわけではありません。
むしろ、専門性を支える大切な要素です。
ただ、専門家にとって重要な「手段」と、お客様にとって重要な「目的」は同じではありません。
専門家は、
「どうやって目的地まで連れていくか」
を見ています。
お客様は、
「その目的地に着いたら、自分はどうなれるのか」
を見ています。
価値が伝わらない原因は、必ずしも専門性の不足ではありません。
少なくとも、私が接してきた専門家事業者では、すでに十分な知識や経験を持っている人が多いです。
むしろ多いのは、その専門性が、
お客様にとって意味のある変化へ翻訳されていない
というケースです。
商品は、「新たな日常」から逆算してつくる
だから私は、事業者と商品を考えるとき、最初に回数や価格を決めません。
まず考えるのは、
- 誰のための商品なのか
- その人はいま、どんな状態にいるのか
- 何に困っているのか
- なぜ、まだ変えられていないのか
- どんな状態になれたらよいのか
- その結果、日常の何が変わるのか
です。
ここが決まってから、初めてサービス内容を考えます。
単発の相談で十分なのか。
複数回の伴走が必要なのか。
知識を伝えれば変われるのか。
実践やフィードバックまで必要なのか。
個別がよいのか、グループがよいのか。
提供形式は、最初に決めるものではありません。
お客様に必要な変化から逆算した結果として決まるものです。
商品とは、
「何を何分提供するか」
ではなく、
お客様を現在地から新たな日常へ連れていくための設計図
だと私は考えています。
ただし、「新たな日常」であれば何でも約束していいわけではありません。
大切なのは、
お客様が望んでいること。
自分が実際に届けられること。
そして、自分自身が届けたいと思えること。
この三つが重なる場所を見つけることです。
売れそうな未来を大きく見せるのではなく、実際に届けられる変化を、具体的な日常の言葉にする。
そこに、長く続く商品価値があります。
価値は、「日常の言葉」にすると伝わる
新たな日常が明確になると、サービスの伝え方も変わります。
「月1回、60分相談できます」
ではなく、
「問題が起きるたびに一人で悩まず、何を優先するかを整理して動けるようになる」
と伝えられる。
「AIの操作方法を学べます」
ではなく、
「資料づくりや情報整理に追われる時間を減らし、本来考えるべき仕事に時間を使えるようになる」
と伝えられる。
専門的な方法を隠す必要はありません。
ただ、その方法が、
お客様の仕事や生活にとって、どんな意味を持つのか。
そこまで翻訳する必要があります。
だから私は、商品開発でも、提案書でも、営業でも、必ず問いかけます。
「それで、お客さんはどうなれるのか?」
そして、もう一段深く、
「それができるようになったら、日常の何が変わるのか?」
と考えます。
何を売るかではなく、誰の日常をどう変えるか
サービスを先につくって、あとから売り方を考える。
私は、この順番では考えません。
まず、お客様にどんな新たな日常を届けたいのかを決める。
そこから必要な変化を考え、必要な支援を考え、商品をつくる。
そして、その日常が伝わる言葉で届ける。
専門家の商品は、サービス内容からつくるのではない。
顧客に届けたい「新たな日常」を決め、その変化から必要なサービスを逆算してつくる。
何を売るのか。
その前に、
誰の日常を、どう変えたいのか。
ここから商品を考えることが、私の事業づくりの出発点です。